東京量子生物学応用研究所は16日、ほぼ全ての生物の祖先がモグラであると発表した。研究をまとめた論文は来月、イギリスの学術誌ネイチャータブロイドに掲載される。
生物の分類においては、同類と思われてもDNA解析の結果から別の種に分類されたり、逆に全くの別種と思われた生物同士が実は同類であると判明する場合がある。だがそうした横の比較が進む一方で、過去においてDNAがどのように枝分かれして来たのかを正確に確かめる手段は存在しなかった。
今回、研究チームは量子DNAアニーリングという新たな手法を開発、DNAを過去のある一時期の状態に巻き戻し、直接観察する事に成功した。量子の持つ「時間の方向性を持たない」性質を利用し、量子状態にしたDNAをアニーリング(焼きなまし)した後、観測して再物質化させる。
研究チームではこれまでにこの手法で哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類など384種のDNAサンプルを約6400万年前の状態まで巻き戻して調査した。その結果、調査したサンプルの99%以上にあたる382種のDNAがモグラ由来である事が確認された。チームは今後もサンプル数を増やして調査を継続するとしているが、今回得られたデータから、昆虫などを除いた「ほぼ全ての生物の祖先はモグラである」と結論づけた。
「生物史が完全に書き換えられる事になるでしょう」草彅剛主席研究員は語る。「ヒトやアルパカなどごく一部の例外を除き、ほとんどの生物はモグラ由来なんです」
草彅氏によると、今から約6400万年前、ほとんどの生物はまだモグラだったのだという。一体どんな世界だったのだろうか。
「その頃、地上は恐竜と巨大な昆虫に支配された危険な場所でした。それ以外にはモグラくらいしかいなかった。モグラは危険な地上を避けて地下で暮らす道を選びました。やがて恐竜が絶滅すると一部のモグラたちは地上へと進出し、様々な種へと進化していったのです。そこにいつの間にかヒトやアルパカが加わり、なんやかんやで現在の多様な生態系が生まれました」
ヒトやアルパカはモグラ由来ではないという。だとすると我々の祖先は一体何なのだろうか。草彅氏は「長い間、ヒトとゴリラやチンパンジーは共通の祖先から枝分かれしたと考えられてきましたが、それは誤りでした」と話す。「ゴリラやチンパンジーのDNAを巻き戻すとモグラになります。しかしヒトはいくら巻き戻してもヒトなのです。生物進化のロードマップ上にヒトは突然、初めからヒトとして登場します。だからヒトには祖先などないのです」
だがバクテリアのような生物ならまだしも、ヒトのような高等生物がある日突然現れるとも思えない。草彅氏の見解によれば「ヒトは進化の結果生まれた存在ではない、つまり何者かによって作られたと考えるのが妥当でしょうね。たぶん神とかアヌンナキとかでしょう」とのことだ。「ちなみに、神がなぜアルパカを作ったのかという点についてですが、研究チーム内では『ついで』説と『可愛いから』説があります。今のところ『可愛いから』説が優勢です」
我々の生活に影響はないのだろうか。「ほとんどの生物がモグラだったからと言って、特に問題はないでしょう」草彅氏はそう話す。「ただ呼び方は変えた方がいいかもしれませんね。これからは、例えば犬は鼻モグラ、猫は髭モグラなどど呼ぶべきでしょう。本マグロは本モグラです」
研究中には悲劇にも見舞われた。「愛犬の散歩中、ふと新しい実験を思いついたんです。すぐに試したくてそのまま研究室に向かいました。夢中になるあまり、犬が実験装置に入りこんでいるのに気付かず装置を作動させてしまったのです。気付いたらモグラになっていました」と涙をこらえる様子で語った。
現在はモグラを犬…いや鼻モグラに戻す研究を進めているが、今のところ成功の見通しは立っていないそうだ。
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